『異人たちとの夏』

 出張中の友人と会うため、昨日から1泊2日で東京に行ってきた。昨晩は月島でもんじゃ焼きを食べ、北海道から上京してきた友人と久しぶりにいろんな話をした。
 せっかく東京に行くのだから、ともうひとつ入れた用事が、日比谷での観劇だ。
 観てきたのは、『異人たちとの夏』(シアタークリエ)。第一回山本周五郎賞を受賞した山田太一の同名小説が原作だ。大林宣彦監督の映画も(賛否両論いろいろあるものの…特にラストのほうとか)、大好きな1本となっている。とにかく、「やっぱり映画のほうがいいや」と決め付けてしまわず、なるべくフェアに観ようと心に決めて、劇場に向かった。
 最初のうちは映画のイメージが邪魔をするのか、舞台の上の登場人物になかなかなじめない気もしていたのだが、主演の椎名桔平をはじめ、内田有紀池脇千鶴らの演じる各登場人物もなかなか魅力的だ。
 ただ、ストーリィを十分に知っていて、先が読めるだけに、伏線的な台詞を一つ聞くだけでもうるっとしてしまう。マチネだったためか、観客は中高年の特に女性が多く、時々笑いも起きたりするのだが、そんなユーモラスな台詞のやりとりこそが実は伏線だったりするもんだから、「ええっ、笑ってる所じゃないって!!」などと思わず心の中でつぶやいたり、なかなか奇妙な観劇体験になってしまった。
 舞台そのものに、映画の記憶もよみがえり、重ね合わさって、最後にはもうボロボロと泣いてしまうほど。よせばいいのに、帰りの新幹線で原作の文庫本を読んで、さらにひとり、ぽろぽろと涙を流してしまった。名古屋公演か大阪公演で、もう一回観てこようかなあ。