きみにしか聞こえない

 同じ成海璃子主演の作品ながら、前日に観た「あしたの私のつくり方」よりお金をかけてしっかり撮ったという印象の作品。監督の作家性は希薄で(価値判断は含んでいない)、きれいかつ無難にまとまっている。ファンタジックなストーリィの道具立てとなる"頭の中の携帯電話"も、特に違和感なく表現されていた。
 傷付くことをおそれる、内気な少女リョウ(成海璃子)が、"電話"を通じて知り合った青年シンヤと心を通わせる中で、明るく前向きに変わっていく。その変化を成海が上手に演じきっている。"間違い電話"の相手として唐突に登場した原田さん(片瀬那奈)も、登場シーンが抑制気味でミステリアスな印象だが、重要な役回りを演じている。
 せつないストーリィにドリカムの主題歌で、泣かせモード全開だった気もするが、「スローラブストーリー」という宣伝文句にふさわしく、じんわりゆっくり染み入る、ハートウォーミングな作品だったと言えるだろう。

(07/06/17・シルバー劇場(名古屋))