KIDS

【ネタばれあり。この作品を観る予定がある方は、このレビューを読むことをオススメしません】

 乙一の短編小説が原作。「あれ、確か『きみにしか聞こえない』(成海璃子主演)の原作と同じ本だったなあ」と思ったが、それもそのはず。『きみにしか…』でデビューした監督が、本作も撮っていた。
 前作を観た後に原作を読んだきりなので、細かいところまでは記憶にないが、映像化するにあたり、いくつかの設定などを加えてストーリィが膨らまされている。特に原作の雰囲気や良さを壊すこともなく、違和感なく観ることができた。
 アサト(小池徹平)、タケオ(玉木宏)の2人が主人公で、劇場に来ているのも若い女性というか、オンナノコばかりだったが、本作で注目すべきはシホ役の栗山千明だろう。顔に負った傷をマスクで隠して生きる悲しい女性役を好演している。物語の前半部分はマスクで顔を覆っているが、印象的な大きな瞳だけで、感情の動きなどが十分に表現されている。
 この監督の持ち味なのか、きれいかつ無難(と、『きみにしか…』のレビューにも書いた)で安心して楽しんでいたが、一ついただけないのが物語のクライマックス。交通事故の全容をスローモーションで描く場面が、とても作り物じみていて、作品全体から見ると非常に異質だった。せっかく作品の世界に引き込まれていたのに、何だかすっかり台無しな気分。あとは結構いいできだったのになあ。

(08/02/03・布施ラインシネマ10(東大阪))