あしたの私のつくり方


 高校生の寿梨(成海璃子)は、学校では仲間はずれにならないように目立たず、家では離婚した母を気遣って良い娘を"演じる"毎日。ふとしたきっかけから、転校した友人・日南子(前田敦子)に携帯メールを送る。日南子はメールを頼りに、新しい学校で人気者"ヒナ"を演じようとするが・・・。

 「本当の自分」というのは、青春時代の物語を描く上で最も大きなテーマの一つだ。"自分探し"ブームなんていうのもあったし、私自身もご多分に漏れず自分探しを繰り返してしまう。「今の自分は本当の自分じゃないんだ」と思うことは、積極的に自己実現を目指すコトでもある反面、現実からの逃避でもある。
 この作品の主題は、本当の自分と偽りの自分なんてものはなくて、「どれもみんな自分なんだ」という観点に立ち、あるがままの自分を受け入れて、その自分の素晴らしさに気付くといったところだろうか。

 ストーリィ中で重要な役割を果たすのが携帯メール。スクリーン上に携帯の画面が映る様子は森田芳光監督の「(ハル)」を連想させる。画面を左右や上下に割って会話のシーンを描いたり、印象的な風景のカットを挿入したり、画面作りへのこだわりは評価できる。
 それだけに、最大のクライマックス場面となる「テレビ電話」のシーンで、主人公の少女2人に、真っ暗なバックを背にアップで語らせるのはいただけなかった。あそこだけ物語が括弧にくくられたような不自然さを出してしまっている。成海璃子の演技も抜群に良かっただけに、あのシーンが本当に残念だ。

(07/06/16・シルバー劇場(名古屋))