塞翁が馬


 今日は歯医者の予約を入れていた。最近半ば恒例となりつつある「サービス残業1時間一本勝負」をサボり、下りの快速電車に飛び乗ったのはいいが、何やらおかしな所で減速を始め、ついには快速の停まらない駅に停まってしまった。先のほうの激しい降雨で、しばらく運行を停止するのだという。
 歯医者に断りの電話を入れ、振り替え輸送の私鉄に乗り換えると、予想以上にスムーズに名古屋駅にたどり着いた。「よし、これなら見たいと思っていた映画『ハゲタカ』を観よう」と思ったものの、先週と上映時刻が変わり、始まるまで1時間近くも暇を持て余してしまった。
 何だか蒸し暑いし、汗をかいて外見的にも精神的にも何となくヨレヨレになっていることもあり、1時間をつぶす方法を探してはみたが、なかなか見つからない。劇場の入っているビルの近くにパチンコ屋を発見。「しばらく行ってないけれど、暇つぶしになるなら」と、ぷらっと立ち寄った。
 たいていパチンコで暇つぶしをしようとすると、あっという間に軍資金がなくなる(根が小心者だから、あまり大きく負けるまではやらない)のだが、こんな日に限って当たりが続いた。パチンコ台のシリーズものとしてもなかなか有名になった、アニメをモチーフにした台で打つ。これから観ようという映画のヒロイン(という位置づけなのか!?)、栗山千明が「理想の男性」と公言するアニメの登場人物も何度も出てくるので(しかも彼が登場するのは当たりの前兆だったりすることが多い)、増えるパチンコ玉の箱を眺めつつ、「ああ、栗山千明さまのお導きかなあ」とぼんやり考えたりもした。
 しかし・・・気が付くと、映画の開演時間が過ぎていた。パチンコでは勝ったものの、歯医者には行けないし、映画も観そびれるし、何だか大事な用事を2つすっぽかしてしまったような気分。