ノン子 36歳(家事手伝い)

【ネタばれあり。この作品を観る予定がある方は、このレビューを読むことをオススメしません】 

 東京で女優(Vシネマ女優ぐらいだろうか)をやったものの、いまいち売れないまま結婚、離婚を経て郷里の田舎町に戻ってきた家事手伝いのノブ子(通称・ノン子=坂井真紀)。実家の神社で暮らすも、昼間からスナックで飲んだくれる生活。ある日、ノン子の前に、祭でヒヨコを売りさばき、ひとやま当てようとする若者マサル(星野源)が現れ、さらに元マネージャーで夫だった宇田川(鶴見辰吾)も田舎町にやってくる・・・。

 何かで紹介文を読み、サエない女が出会いを経て再生するという展開から、相米慎二の遺作「風花」を連想しつつ、この作品を観た。登場人物の描き方が薄っぺらく、特にマサルのキャラクターがあまり深められていなかった。純粋でまっすぐ、という感じかもしれないが、何だかつかみどころも現実感もない人物像にしか思えない。
 そのため、ノン子がマサルに魅かれていくのも何となく腑に落ちなかったし、最後に「キレる若者」になってしまうのも、時々急にカッとなるような描写を入れて伏線を引いているつもりなのは理解できるが、説得力に欠ける気がした。
 ヒヨコの大群の中、手に手を取ってノン子が逃げていくシーンとか、そのノン子が巫女姿に足袋だったため、マサルが自分のスニーカーを履かせていた描写とか、ちょっと「いいな」と思うシーンもあっただけに、この監督の作風はきっと嫌いじゃないのだけれど、この作品はそれほどいいと思えない。観る前から「風花」レベルを期待してしまったのと、ドラマ「ポケベルが鳴らなくて」以来、坂井真紀があまり得意ではないことも、この作品にあまり心ひかれなかった原因だろうか。
 祭の神社でマサルが暴れるシーンは何だか呆れたし、巫女姿の坂井真紀が逃げていくのも、そういう趣味の人を取り込もうって作戦ですか?って意地悪な見方をついついしてしまった。

(09/02/15・名古屋シネマテーク