吉野北高校図書委員会

吉野北高校図書委員会 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

吉野北高校図書委員会 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

 炎天下のグラウンドや体育館、武道場での厳しい練習。油絵の具のにおいが染み付いた美術室で、懸命に彫った彫刻。練習を繰り返して、ようやくたどり着いた合唱のハーモニー。学生時代の想い出の中でも、部活に費やした時間の記憶は、ひときわ大きな意味を持っている。

 図書委員や読書家、放課後の時間を持て余した生徒まで、放課後の図書館に集うさまざまな者にとって、図書館で過ごす時間や本のにおいの記憶は、部活動と同様に、懐かしく他に代えがたい想い出となりうる。そうした人たちにとっては、図書館こそが、かけがえのない出会いや経験、想い出の詰まった青春の空間たり得るのだ。

 本作は高校の図書館を舞台に、図書委員のメンバーが繰り広げる恋や友情の物語だ。「文化系」と呼ばれる属性だった多くの人たちの共感を得るに違いない。特に、狭いマーケットであることは疑いようがないものの、図書館を「溜り場」とするような学生時代をおくった人々には、まさにピンポイントに響くだろう。中学時代に図書新聞委員長だった私が保証する。この青春物語が、図書館を舞台に描かれたということに、心から拍手をおくらずにはいられない。