わらび座観劇

 わらび座のミュージカルを観た。タモリじゃないけど、ミュージカルなんて普段、全くと言っていいほど観ないのだが、わらび座だけは別だ。
 この劇団は秋田・田沢湖の近くに拠点をかまえて共同生活を送りつつ、専用の劇場で公演したり、全国をわたり歩いての公演を行ったりしている。秋田の施設では昔から、修学旅行生を受け入れて、舞踊などの指導もしている。
 私も中学校の修学旅行で、わらび座を訪れている。宿泊施設もあり、泊まり込みで昼間はソーラン節の踊りを学び、クラスのみんなで練習する。成果を披露しあったあとは、劇団員による作品を観劇し、さらに劇中の歌をみんなで合唱する。感動と程よく心地良い疲れとともに劇場を出る頃には、すっかり夜も更け、澄んだ空気と満天の星空が広がっていて、未だにその時の感覚は忘れていない。
 あれから十数年、たまにわらび座巡回公演の広告なんかを見かけると「久しぶりに行ってみようかなあ」と思うものの、これまでに観ることのできた作品は1本だけだった。
 今回は名古屋の隣・長久手町での上演。演目は手塚治虫の「火の鳥」だ。ずいぶん昔にアニメ映画で観たので、ストーリィは観ているうちに思い出した。生命とか、輪廻とか、物語のキィになる概念は、わらび座の数々の作品、そして劇団そのもののテーマや世界観とも重なり、さすがに素晴らしい出来だった。演技も迫力があり、妹尾河童が担当した舞台美術も素晴らしく、ラストの背景の空の美しさには息を飲むばかりだった。
 月末に名古屋でも上演されるとのこと。再度観に行く価値もありそうだ。原作も再び読み返したくなった。
(10/01/17 長久手町文化の家 森のホール)