トラックに乗って


 大型トラックの助手席に乗った。ほんの十数分間だが、座席が高くてとてもいい眺めだ。
 仕事を終えて、タクシーを拾おうと通りにでたら、目の前に大型のトラックが停まった。人の良さそうな、どこか訛りの混じったドライバーが「今池はどう行ったらいいですか?」と尋ねてきた。
 まるっきり文科系アタマなせいか、極度の方向音痴で道順の説明がうまくできない。そもそも、よく通る道なのに、経路が順を追って思い浮かばない。
 「うーん、そっちのほうへこれから行くのだけど・・・」と呟くと、「じゃあ乗っていきませんか」とドライバー氏。危ない人ではなさそうなので、道案内を請け負った。
 ドライバー氏は富山からアイスクリームを運んできたとか、一年前まで自分の会社でダンプに乗っていたが、公共事業が減って仕事がなくなり、昔世話になった人の会社に拾ってもらったとか、初めて出会った見ず知らずの人の身の上話を聞くのは不思議な感覚だった。
 十数分間のドライブで、無事今池までの道案内を果たして別れた。通りすがりの、ふとした相手とのココロの交流に、何だか素朴な嬉しさがこみ上げた。
 仕事でも日々、多くの人と出会い、すれ違っている。でも、人と話すことがこんなに楽しいなんて、いつの間にか忘れてしまっていたかも知れない。ふと、思った。