硫黄島からの手紙
ごめんなさい、見くびってたよ。
どうせ、ハリウッドの戦争映画でしょ。
どうせ、アイドルグループのお兄ちゃんが主演(のうちの一人)なんでしょ。
観る前に持っていたそんな先入観や偏見は、あっという間に吹き飛んだ。実話を下敷きに、圧倒的な迫力と深い人物描写で描かれた1本で、長めの尺も気にならないぐらい引き込まれた。
もうすっかり評判が定着した渡辺謙はもちろん、最初はどこか醒めた兵士が極限状況の下に置かれて、必死で生き延びようとする様を二宮和也がしっかり好演していたし、伊原剛志や加瀬亮もそれぞれいい演技をしていた。中村獅童だけイマイチっぽかったけれど。
何より意外だったのは、アメリカ側の視点に偏らないようにしようという配慮がうかがわれたこと。あの戦争でにおける日本人独特の行動様式をただただ批判したり、興味本位で描くのではなく、国際的にバランスの取れた日本人の"正しい"行いや、逆にアメリカ兵の"正義"とは到底かけ離れた行動も1つのエピソードとして取り入れられていた。日本人もアメリカ人も、ココロに正しいところや弱いところを持つ同じ人間として描かれるとともに、戦争という極限状況が人間をおかしなところに追いやっていく過程をしっかりと見せていた。
そうそう、回想シーンの二宮と裕木奈江演じる妻とのシーンは、戦時中とはいえ子どもを宿し、期待に胸を膨らませる夫婦が戦争で無惨に引き離される理不尽さが良く描かれていて印象的だった。
(06/12/09・ワーナー・マイカル・シネマズ津)